大塚国際美術館の所蔵作品数は1000余点、古代、中世の作品だけでも200点を超えるので多少省略せざるを得ず、ルネッサンスのコーナーに向かう。最初はダ・ヴィンチなどの受胎告知の作品がずらりと並ぶ。その次にボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」が現れる。フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵の有名な作品で、1480年代中頃のカンヴァスに描かれた絵画である。以前、現地で現物を見たことがある。陶板の継ぎ目の線を除けば見分けがつかないほどそっくりにできていて美しい。
こちらの作品も有名な、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」。同じくウフィツィ美術館所蔵である。ウルビーノ公グイドバルドが自室のために依頼した作品で、彼女が手にする切られたバラは儚い快楽の隠喩とされる。他にもジョルジョーネとティツィアーノによる「眠れるヴィーナス」、ハインツ、ヨーゼフによる「眠れるヴィーナス」も展示されていた。
この作品も見たことがある、ブリューゲル、ピーテル(父)の「雪中の狩人」。ウィーン美術史美術館所蔵である。北国の凍てつく風土を見事に映し出している。人々は小さく主人公はいないが、これこそ人々の暮らす有り様で、このような視点は近代のものといわれる。
こちらの作品もブリューゲル、ピーテル(父)の「バベルの塔」。同じくウィーン美術史美術館所蔵である。バベルの塔とは、旧約聖書の「創世記」に登場する伝説上の高層建築物の通称である。神の怒りを買った「人間の驕りの象徴」とされ、今日でも「思い上がった実現不可能な構想」の代名詞となっている。
こちらの作品は有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。2003年に開館5周年を迎え、その記念事業として修復が完了した「最後の晩餐」を修復前の「最後の晩餐」と対面で比較鑑賞できるように展示している。これは修復前のもの。420×910cm。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院所蔵である。
この作品もまた有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」。世界で最も知られた女性像だが、実在の人物ではない可能性もある。レオナルドはこの絵を注文主に渡すこともなく、最後まで手元に置いていたからという。ルーブル美術館所蔵。
こちらもレオナルド・ダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」という作品だが、初めて見る肖像画である。レオナルドがミラノのルドヴィーコ・スフォルツァ侯に仕えていた時期の作品。モデルは、ルドヴィーコの愛妾となったチェチリア・ガッレラーニ(15才位)である。貂はルネッサンスの動物譚では「純潔と節制」のシンボルであった。ポーランドのクラクフ国立美術館分館の所蔵。
「光の画家」「光の魔術師」の異名を持つ、レンブラント・ファン・レインの作品は20点以上展示されている。これは中でも有名な「夜警」。その名称は後世つけられたもので、元は市民隊(射撃隊)を記念して描かれたもの。集団肖像画と呼ぶ。アムステルダム国立美術館所蔵。
マネが「画家の中の画家」と呼んだ宮廷画家、ディエゴ・ベラスケスの作品は10点以上展示されている。これは「ラス・メニーナス(女官たち)」という作品。ベラスケス自身の人生と芸術を集大成した記念碑的傑作。フェリペ4世王家の群像図と、制作中の画家そして自画像の結合。先例のない革新的な構想により、王女マルガリータと侍女、鏡の中の国王夫妻等、画中の人物を眺めている鑑賞者は実は国王その人である。プラド美術館所蔵。
こちらも同じくディエゴ・ベラスケスの作品「バッカスの勝利(酔っ払いたち)」。酒神バッカスがブドウの葉と房の冠を男たちに授ける、神話上の物語を農民たちの酒盛り風景のように描いている。プラド美術館所蔵。
バロック期のフランドルの画家、リュべンス、ピーテル・パウルの作品も10点以上展示されている。この「三美神」は中でも有名だが、左の女神は愛妻エレーヌ・フールマンに似通うといわれる。最初の妻イザベラが死去した4年後の1630年に、53歳のリュべンスは16歳のエレーヌと再婚し、以後、多くの作品にモデルとなった。プラド美術館所蔵。